萬古焼とは?特徴・種類・窯元・人気作家・歴史のあれこれ

萬古焼という焼き物の名前を聞いたことがありますか?
実は、国内産の土鍋のほとんどを手掛けているのはこの萬古焼。
もしかすると、お料理好きな方のキッチンには必ずと言っていいほど1つあるかもしれませんね。
こちらではそんな萬古焼の特徴や歴史、現在の萬古焼などをご紹介いたします。

目次

  1. 萬古焼とは
  2. 萬古焼の特徴とは
  3. 萬古焼の歴史とは
  4. 萬古焼の人気の理由とは
  5. 現在の萬古焼とその魅力とは
  6. まとめ 調理器具や食器として萬古焼をどうぞ

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| 萬古焼とは

萬古焼とは、現在、三重県四日市市と菰野町を中心に生産されている焼き物です。
萬古焼には細かくさまざまな名称があるのですが、なかでも「四日市萬古焼」は、1979年に国の伝統工芸品に指定されました。
萬古焼の始まりは、江戸時代中期といわれています。
桑名の豪商として知られる「沼波弄山(ぬなみろうざん)」が、窯を開いたことでその歴史をスタートさせました。
現在の三重県朝日町小向で開かれた窯は、近隣の四日市市や菰野町にも広がっていきます。

萬古焼の代表的な焼き物は土鍋・急須

萬古焼の代表とされる商品は土鍋と急須。
特に土鍋の生産は国内のシェア80~90%近くを占めているほど。
近年は、大きさや形状もあらゆる商品が作られ、陶板、タジン鍋、ごはん釜、炭コンロなど多彩です。

そして、1978年に国から伝統的工芸品に指定された四日市萬古焼急須。
これは紫泥の急須です。
紫泥とは、鉄分を多く含んだ赤土を、釉薬をかけずに焼いたもの。
同じく三重県産の伊勢茶と、萬古焼急須との組み合わせは抜群です。

| 萬古焼の特徴とは

300年以上の歴史を誇る萬古焼は、その長い年月の中で特徴的なものを築き上げました。

そんな萬古焼の特徴とは、まず分類として「半磁器」に分けられる点です。
半磁器の萬古焼は、非常に硬く丈夫で耐水性が高いのも大きな特徴といえるでしょう。

また萬古焼は、釉薬を使用しません。
つまり、素材そのものの色を活かした器作りをしているという特徴があります。
その色味は、紫色(小豆色)をしており、紫泥焼きと呼ばれることも。

中でも萬古焼の代名詞ともいえる急須においては、使い込むほどお茶の味わいが変化するといわれており萬古焼ならではの魅力です。
萬古焼の急須でお茶の味わいの変化を感じるのも、楽しみ方の一つといえるでしょう。

四日市萬古焼の特許

萬古焼の特徴は、その陶土にあります。
耐熱性のある陶土を用いてつくられる萬古焼は、レンジや炭火による空焚き、直火といった用途にも使えます。
それは陶土に含まれるリチウム鉱石のおかげです。
リチウム鉱石が陶土の中に、およそ4割含まれているため、強度があるだけでなく直火などに十分耐える焼き物をつくることが可能になります。
これは特許を取っており、四日市萬古焼だけの特徴です。

「萬古の印があること」がいちばんの特徴

そして萬古焼には、装飾や技法など特に決まった型のものはありません。
「萬古の印があることがいちばんの特徴」と言われるほど形や色はさまざまで、自由な発想のもと、ものづくりが行われている焼き物です。

成形方法もさまざまで、水ゴテ・排泥鋳込み・型萬古などたくさんあり、焼成も土の種類によって焼き方を変えています。



| 萬古焼の歴史とは

萬古焼は、江戸時代中期に桑名の豪商・茶人であった沼波弄山(ぬなみろうざん)が始めたものです。

この頃、沼波家は「萬古屋」という陶器の廻船問屋を営んでいました。
幼少期から茶道に触れ、商人と茶人という二つの顔を持つ弄山は、茶趣味が高じて朝日町小向に開窯したことが始まりです。

弄山は、非常に教養のある人物で京焼の技法を元にさまざまな作品を作り出します。
当時では珍しかったとされる「オランダ文字」や「更紗模様」といった異国のデザインを取り入れた作品もあり、たくさんの人々から人気を集めるのでした。

ここからは、萬古焼の生みの親「沼波弄山」と萬古焼の歴史についてご紹介していきます。

始まりは、商人で茶人であった沼波弄山

後世にも受け継がれて欲しいとの思いを込めて「萬古不易」の印を用いたことが、名前の由来とされています。
彼は、京焼の技法を取り入れ「古萬古」と呼ばれる色絵を施した優美な焼き物を生み出しました。

1720年、西洋の学問・芸術などが少しずつ国内に親しまれるようになると、弄山の作品には異国を思わせる斬新な文様や形が現れはじめ、弄山の焼き物は日本の文化人から人気を得るようになります。
その人気は、将軍家からの注文を受けるようになるほど。

そして弄山は、江戸・向島小梅に窯を築き「江戸萬古」を手掛けるようになります。

弄山が遺した萬古焼を森有節・千秋兄弟が受け継ぐ

弄山が亡くなり、萬古焼は一時中断しましたが、江戸時代後期になり森有節とその弟である千秋によって、「有節萬古」と呼ばれる萬古焼が再び作られるように。
はじめは、古萬古の雰囲気を再現したものが焼き物でしたが、だんだんと独自の表現を見出し、やがて流行します。

また、煎茶が流行しつつあったこの時期に、有節は煎茶急須を研究し、木型による急須を誕生させました。
これは、非常に薄い作りであり、内側に龍の陰刻がされた急須。
さらに、ピンク色の釉薬の開発や、華やかな色絵が施された急須は、西洋でも評判になります。

萬古焼の発展と四日市萬古の誕生

明治時代には、パリ万博や京都博覧会などへ出品され、多くの賞を受賞し、高い評価を受けました。
その頃、桑名周辺地域では「桑名萬古」と呼ばれる有節萬古に似た焼き物が多くつくられますが、これは明治維新後、商業の中心地となった四日市で作られる萬古焼に吸収されていくことになります。

「四日市萬古」は山中忠左衛門が、水害の被害を受けた地区住民の救済のために窯をつくったことが始まりです。
自ら製陶方法を会得し、住民にそれを伝え、道具と材料を寄付したのです。

それから四日市萬古は、どんどん産業として発展しますが明治時代中期になると原料の白土が採れなくなり、停滞していきます。
そこで、赤土を使ったろくろ引きの紫泥急須が生み出され、四日市萬古焼の主力製品となったのです。

半磁器の登場、そして国産土鍋生産量日本一へ

1911年には、水谷寅次郎が磁器土と陶土を合わせた半磁器の開発に成功します。
下絵付けの発色が良く土の温かみが感じられ、さらに大物をつくることができるこの半磁器は、開発した翌年に大正時代となったことを記念し「大正焼」と名付けられました。

半磁器の開発により、萬古焼の器は全国的に需要が増え、有数の陶磁器産地になりました。
昭和後期に入ると、耐熱性を上げる技術も進み、国産では土鍋生産量日本一になったのです。


| 萬古焼の人気の理由とは

萬古焼は、非常に耐熱性のある素材が使われています。
そのため、さまざまな調理方法に対応した料理を作ることが可能です。
さらに熱が加わることで遠赤外線が発生し、食べ物を効率的に温めてくれます。

通常、陶器は直火にかけることが難しいとされていますが、萬古焼の土鍋は、直火・レンジ・オーブンなどにも使うことができる便利な一品です。
そして土鍋と並び、萬古焼を代表する人気商品が急須。
萬古焼の急須でお茶を淹れると、渋みがまろやかになるといわれています。

萬古焼を代表する人気の焼き物「土鍋」

萬古焼を代表する人気の焼き物が「土鍋」です。
現在の国内生産高は80〜90%を占めており、その人気ぶりが伺えます。
みなさんが普段使っている土鍋も、萬古焼かもしれません。

時代とともにサイズや形状も多様化していき、現在では陶板やタジン鍋、ご飯釜、炭コンロなどさまざまな商品が生まれています。
この他にも、IH土鍋の開発も活発に行われており、私たちの食を支える商品をどんどん作っているのです。

上述でもご紹介したように萬古焼の土鍋は直火や空焚きにも対応しており、さらにはレンジ、オーブン、IHにも使えるという万能な焼き物といえます。

萬古焼の人気商品といえば「急須」

土鍋と同じく、萬古焼の代名詞とされているのが「急須」です。
萬古焼の急須に使用される「紫泥」の色合いは、緑茶によく合うため人気となっています。

萬古焼の急須が人気の理由は、使うほどに魅力が増すという点です。
萬古焼の急須で飲むお茶は、渋みがほどよく吸収されうまみを引き出してくれます。

このように長年使い続けることで独特の味わいを楽しめるのも、萬古焼の急須の魅力です。
さらに味わいだけではなく、使うほどに光沢も出てきます。
高い技術や土の風合いによって、美しい見た目をもつ萬古焼。
優れた素材を活かした使い勝手の良さから根強い人気があります。

萬古焼の人気窯元・作家さんをご紹介

萬古焼は、300年以上の歴史の中で伝統を積み重ねながら変化していきました。
そして現代、萬古焼の産地である四日市市と菰野町には100社以上の窯元と問屋が存在します。

窯元や作家さん以外にも萬古焼に関わる専門業者はたくさんあり、それぞれが釉薬や粘土、素地、型などを扱っているのです。

ここでは、萬古焼の人気の窯元・作家さんを一覧でご紹介していきます。

光泉窯 藍窯 堀内製陶所 土本製陶所
泰成窯 松尾製陶所 三鈴陶器
山口陶器 クラフト石川 南川祐作

それぞれの窯元・作家さんが切磋琢磨しながら、萬古焼の伝統を受け継ぎ、そしてこれからの時代の萬古焼を作っていっています。
素敵な萬古焼をたくさん生み出していますので、自分好みの萬古焼と出会えれば、より日常が豊かになっていくことでしょう。



| 現在の萬古焼とその魅力とは

土鍋や急須がよく知られる萬古焼ですが、さまざまなテーブルウェアが生まれ、国内だけでなく、海外でも知られるようになりました。
海外向けの土鍋や花器、ノベルティー製品なども積極的に開発し、国内に留まらず海外でも多くの方に使われています。

さらに萬古まつりや萬古陶磁器コンペ、子ども陶芸コンクールなどを開催し、次の世代の育成や新たな技術開発も行なっており、萬古焼のさらなる発展に期待です。
そんな現代の萬古焼は、現代の生活に馴染むような器やカップなども、おしゃれさと使いやすさを兼ね備えた魅力的な器がたくさんあります。

どこかモダンな形の急須は、どんなインテリアにも合いそう。

現在は可愛らしいデザインの土鍋も。

おしゃれなカフェタイムを過ごせそうなカップとソーサーです。

集めたくなるカラー!土の味わいもしっかり感じられそうなカップ。

ニュアンスのある色合いと素敵な装飾に惹かれます。

| まとめ 調理器具や食器として萬古焼をどうぞ

今回は、萬古焼の歴史や特徴、そして人気の理由などについてご紹介しました。
特徴的な陶土を使ってつくられる萬古焼は、耐火性に優れ幅広い調理に対応しています。

より一層、お料理の幅が広がるだけでなく毎日の調理が楽しく素敵なものになるでしょう。
土鍋や急須など日常的に使える萬古焼の焼き物は、一度使ったら手放せない焼き物になりそうですね。

 

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