美濃焼とは?特徴・種類・窯元・人気作家・歴史のあれこれ

日本で作られる陶磁器の約半数を占める美濃焼。
長い歴史を持ち、現在までたくさんの焼き物が作られ、人々に親しまれています。
身近にある陶磁器が、実は美濃焼だったという方も多いはず。
今回はそんな美濃焼についてご紹介いたします。

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目次

  1. 美濃焼とは?
  2. 美濃焼の歴史
  3. 美濃焼の様式と特徴
  4. 世代を超える人気!和食器の魅力あふれる
  5. 美濃焼の代表的な作家・窯元
  6. これからの美濃焼
  7. まとめ 自分好みの美濃焼を見つけよう

| 美濃焼とは?

美濃焼とは、岐阜県の多治見、土岐、可児、瑞浪、笠原などで作られる陶磁器です。
これらは有名な焼き物の産地として知られている場所。
美濃焼には、人々の好みや流行などを反映してきた歴史があります。
新しい技術や価値観を生み出し、世の中に求められる焼き物を作り続けてきたのです。

そのため、美濃焼は一目で「美濃焼」と分かるような特徴はありません。
それほど多彩な姿をもつ焼き物といえるでしょう。

美濃焼の特徴は「特徴がないこと」

上述で「美濃焼と分かるような特徴はありません」と記載しました。
実は、それこそが美濃焼の最大の特徴といえます。
美濃焼は、「特徴がないこと」が特徴となっているのです。

このように言われる理由は、美濃焼の長い歴史が関係しています。
美濃焼は、歴史の中で多種多様な技法・釉薬を生み出してきました。
移りゆく時代に合わせて、さまざまなデザインの器が作られてきたのです。

色や形状、絵付けなど、形式にとらわれることなく変化してきた美濃焼。
その様式の種類は、実に15種類にものぼります。

様式の種類ごとの特徴については後述していきますが、様式によって色や質感など異なる特徴があるのです。

美濃焼の技法が生み出す魅力

美濃焼のほとんどは、「ろくろ・手ひねり・押し型」といった技法によって生産されています。
成形後は、絵付けや彫付けによって模様を施し、素焼きを行なっていくのが一般的な流れです。
素焼きを行なったあとは、多種多様な釉薬を使って「釉掛け(くすりがけ)」をして本焼きしていきます。

上述でご紹介した通り、伝統工芸品に指定されている美濃焼は15種類です。
種類によって釉薬の仕上がりが違ったり、色合いが優しくなったり素地の質感がなめらかになったりとさまざまな違いがあります。

「特徴がない」美濃焼といわれていますが、その多彩な表現は何よりも特徴であり魅力といえるでしょう。
どれをとっても、素敵な仕上がりであることに違いありません。




| 美濃焼の歴史

美濃焼の起源は、奈良時代に行われた須恵器づくりが始まりとされています。
朝鮮半島から伝わってきた須恵器づくりの技術を元に、独自に発展していくのでした。

平安時代になると、釉薬をかけた焼き物「灰釉陶器」が作られます。
これは、植物の灰を使った釉薬で「白瓷(しらし)」と呼ばれました。

その後、鎌倉時代になると日常使いの器として、釉薬をかけない「山茶碗」が作られました。
さらには、黄褐色や黄緑色の釉を用いた「古瀬戸(こせと)」や酸化鉄を含んだ「鉄釉(てつゆう)」など、目覚ましい発展を遂げていきます。

そして、室町時代に入ると大窯も作られます。
岐阜県東濃を中心として焼き物づくりが活発化していくのでした。

安土桃山時代には茶陶として

美濃焼は、安土桃山時代の約30年の間に、黄瀬戸、瀬戸黒、志野、織部などの基本となる様式が出来上がり、茶道で使われる陶器「茶陶」としても素晴らしい焼き物が多く生まれています。

詫び寂びの世界を求めた茶人・千利休に対して、その弟子の古田織部は思い切りのある自由な美を好み、安土桃山~江戸初期にかけて「織部」が誕生します。
これにより、美濃焼は一層発展し、京都や大阪、江戸にも伝わるようになります。

現代では日常の器としても

江戸時代になると、主に茶陶の本場は京焼に移ります。
美濃焼では登窯が使われるようになり、日常雑器を多く手がけるようになりました。
その結果、御深井焼や、染付、青磁や白磁などの生産が主流になります。

大正時代に入ると、美濃焼からは芸術性の高い工芸品が作られるようになり、自らの表現を追求する陶芸家も現れます。
さらに、明治時代から近代にかけては、焼き物を安い価格で大量生産できる技術が進んだことによって、美濃焼は全国各地に広まっていきました。



| 美濃焼の様式の種類と特徴

美濃焼のさまざまある様式の中で、基本とされているのが以下の4種類です。

  • 黄瀬戸
  • 瀬戸黒
  • 志野
  • 織部

ここからは、美濃焼の様式の種類ごとに特徴を解説していきます。

趣深い黄瀬戸(きせと)

あたたかみのある柔らかな黄色に、植物の文様が描かれているのが特徴の焼き物。
緑の斑点や、焦げが風流な「あやめ手」、厚みがありほとんど文様や焦げがない「ぐいのみ手」があります。

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林 虎男「黄瀬戸 愚以呑」 高4.3×径6.3 状態良・高台内掻銘・栞添・共裂・共箱 乙塚窯。美濃の最長老で無形文化財の加藤景正の三男「二代」を嗣、黄瀬戸中心に茶陶を制作。 大正十五年岐阜生 #黄瀬戸 #林虎林 虎男「黄瀬戸 愚以呑」 高4.3×径6.3 状態良・高台内掻銘・栞添・共裂・共箱 乙塚窯。美濃の最長老で無形文化財の加藤景正の三男「二代」を嗣、黄瀬戸中心に茶陶を制作。 大正十五年岐阜生 #黄瀬戸 #林虎男 #陶芸 #ぐい呑 #酒盃 #古美術 #古美術品 #蓮慈光美術 #pottery #sakazuki #sakecup #kiseto #renjikoh

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独特の黒色が魅力の瀬戸黒(せとぐろ)

赤みを帯びた黒い茶碗しかなかった時代に、深みのある美しい黒色で、茶人たちに歓迎された焼き物。
1200度前後の窯で焼成し、窯の外に取り出して急激に冷やすことでこの黒色が現れます。
この技法は「引出黒」と呼ばれます。
また、当時は丸みを帯びた茶碗が主流でしたが、瀬戸黒は、高台が低い半筒の形で作られたことも注目されました。



柔らかな乳白色の志野(しの)

繊細な貫入、優しい白色とうっすらとした緋色が美しい志野。
日本人が作った初めての白い焼き物といわれています。
当時の器は無地が常識でしたが、志野は模様が描かれているのが革命的でした。
さらに無地志野、絵志野、鼠志野、紅志野、練込志野などの種類があり、志野茶碗「卯花墻」は国産の茶碗では2つしかない国宝に指定されています。
志野は江戸時代になり、技術が失われていましたが、志野と瀬戸黒の人間国宝である荒川豊蔵が志野を再現しました。



古田織部がつくらせた織部(おりべ)

安土桃山時代に、茶人の古田織部が、自分の好みに合わせてつくらせた焼き物。
ゆがみも味わいとみるだいたんなフォルム、鮮やかな緑、鉄を含んだ顔料で描かれる文様や絵は、それまでにないものでした。
織部黒、青織部、志野織部など形や模様もたくさんのものがあります。
また、古田織部は、黄瀬戸・瀬戸黒・志野の誕生にも関わっていたと考えられていれます。



美濃焼の様式は全部で15種類

美濃焼は、上述でご紹介した「黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部」の4種類を含めて、全部で15種類あります。 残りの11種類の様式について、一覧でまとめてみました。
様式 特徴
天目 特定の形状の茶碗かつ、鉄黒褐色釉が施されたもの。
染付 白地に青色の紋様が描かれており、無色の釉薬が施されたもの。
赤絵 白い素地に赤をメインとした釉で上絵付けしたもの。緑・黄・青・紫を加えたものもある。
青磁 青・緑の釉薬を用いて高火度焼成したもの。
鉄釉 主に植物の灰に酸化鉄を混ぜ合わせた釉薬を用いたもの。
灰釉 植物の灰を使った釉薬を用いたもの。
粉引 李氏朝鮮から伝わったとされる陶器。またその陶器を元に作られた焼き物のこと。
御深井 名古屋城の御深井丸で焼かれた焼き物のこと。
飴釉 鉄釉の一種。酸化焼成により黄褐色の飴色に仕上がる釉薬を用いたもの。
美濃伊賀 美濃で焼かれた花入・水差しなどで散見される伊賀風陶器のこと。
美濃唐津 美濃で焼かれた唐津風陶器のこと。

| 世代を超える人気!和食器の魅力あふれる

釉薬の流れ、ゆがみのある形を表情として楽しむ美濃焼は、和食器の魅力を存分に味わえるので、あらゆる世代の方から人気の焼き物です。
さらに美濃焼は、作られている地域や品も多種多様なことが人気の理由の一つになっています。

時代を反映しながら発展し続けた歴史により、地域ごとに風合いが異なるだけでなく、それぞれ非常に質の高い焼き物が誕生したのです。
今では、さまざまな方に愛される陶磁器として、日本国内の食器のおよそ半数がつくられる焼き物の産地になりました。




| 美濃焼の代表的な作家・窯元

世代を超えて愛されている美濃焼。
美濃焼自身も、いくつもの世代を乗り越えて発展してきました。
その中で、たくさんの代表的な作家さんや窯元を生み出しています。
ここからは、美濃焼を代表する以下の作家・窯元をご紹介していきましょう。

  • 美濃焼 伸光窯
  • カネコ小兵製陶所
  • 美濃焼 ふくべ窯

美濃焼 伸光窯

「伸光窯」さんは、岐阜県土岐市にある創業明治20年の老舗陶磁器製造メーカーです。
現在は、田中一亮(たなかかずあき)さんが5代目として器づくりに励んでいます。

美濃焼の窯元として、先代から受け継がれた技術を元に作られた器はどれも高品質。
生活に寄り添った機能性とデザイン性を兼ね備えた魅力的な商品を生み出しています。

カネコ小兵製陶所

「カネコ小兵製陶所」さんは、創業大正10年の美濃焼の窯元です。
美濃焼が持つ長い歴史と伝統を大切にしながら、日々器を作り続けています。

何気ない日常を豊かにしてくれる、そんな使い勝手の良さや温もりのあるデザインが人気です。
美濃焼の伝統と発展を心に、新しい焼き物づくりにも励んでいます。

美濃焼 ふくべ窯

「ふくべ窯」さんは、岐阜県土岐市にある美濃焼の窯元です。
「精炻器(せいせっき)」という焼き物を夫婦で作られています。

精炻器は、化粧土を用いた立体的で精緻な絵付けが特徴です。
日本の焼き物でありながら、どことなく異国情緒あふれる魅力があります。

| これからの美濃焼

それぞれの時代に合った焼き物を作り上げてきた美濃焼では、現代のライフスタイルに合うような作品も次々と生まれています。
こちらでは「現代の美濃焼」ともいえる作品を紹介します。


精炻器という美濃で生まれた焼き物。繊細で、どこかモダンな柄が素敵。


明るく、味わい深いカラー。こちらなんとお重です!お重として以外にもたくさん食卓に登場させたくなります。


伝統的な黄瀬戸の平鉢。料理をおいしそう見せてくれる色合いです。鶏の絵柄についにっこり。


貫入に入った墨色が神秘的な雰囲気のお皿です。いつもの盛り付けをぐっときれいにみせてくれそう。


ペアの贈り物にもおすすめ!クールでスマート、和食器の味わいも楽しめる薄くて丈夫なカップです。


漆や茄子のような神秘的な和の色合い。つやつやとしたガラスのような透明感が美しいマグカップです。

| まとめ 自分好みの美濃焼を見つけよう

いかがでしたでしょうか?
美濃焼はさまざまな魅力あふれる、実に多様性に富んだ焼き物。
あなただけのお気に入りの器をぜひ探してみてくださいね。

また全国の窯元様、陶芸作家様のうつわを通販で買える「大人の焼き物オンラインショップ」でも素敵なうつわを沢山取り扱っておりますので是非ご覧ください!

 

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